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学会創設60周年を迎えて

北海道都市地域学会

会長

​押谷  一

​(酪農学園大学名誉教授)

 2019年12月に中国で初めて報告されてから2年半以上続く新型コロナ・ウイルス(COVID-19)は、次々と新たな変異株が出現し、わたしたちのくらしや業務に対するさまざま制約が続いています。さらに今年の2月には、ロシアが隣国・ウクライナに武力によって侵攻をはじめるなど人類は、高度な文明によって形成してきた社会システムを大きく変容することが求められているように思います。


 こうしたなか、北海道都市地域学会は、今年、創立60周年を迎えるとことなりました。
 

 今期の会長を務めさせていただくにあたり、これまで諸先輩が築いてこられた学会の活動を踏まえて、これからの活動について展望を述べさせていただきます。
 

 北海道は83,424㎢、東京都を含む関東6県を合わせた面積の倍以上で、ヨーロッパのオーストリア共和国とほぼ同じ大きさです。人口は、538万人余りで、日本の総人口の約4.2%を占め、人口密度は69人/㎢と、全国(341人/㎢)の約5分の1となっています。
 

 およそ150年前、明治政府による開拓・移住政策によって人口が急増しました。これはロシア(当時)の南下政策への対応はじめ、北海道の豊かな資源の獲得を目指した政策によるものでした。道内の林業資源、海産物、農作物を輸送するため、急速に道路整備も進められ、明治18年(1885年)には、国・県・里道の総延長は1,200㎞程度でしたが、囚人労働などによる開削によって明治33年(1900年)には5,560㎞に達し、地域の産業や人々の生活に大きな影響を与えてきました。2016年には、北海道新幹線が開業し、2030年には、現在の北斗市から札幌市まで延伸される予定となっていますが、人口密度は極めて低く、モータリゼーションが進んだことや人口流出などによってJR北海道では赤字路線が多く、廃線を相次いで進めています。北海道の主要産業は豊かな自然環境を背景に農業をはじめ食関連産業、観光などですが、地球温暖化や、COVID-19の影響によって不振が続いています。こうしたなかで、人口の流出を食い止め、地域経済を活性化することが課題となっており、学会は、北海道の抱える課題について、研究者、専門家の視点から解決策を示していくこと求められています。


 学会では、毎年、道内の市において地域資源を活用する独創的な発想や取り組みを共有することを目的として都市問題会議を開催しており、今年はオホーツク地方の紋別市で開催されます。北海道の魅力を再認識する機会となることを期待しています。


 論文集「都市学研究」、Web版「北海道都市」については、学会からの情報発信の重要な役割を果たすために多くの会員のみなさまから研究や調査の成果を積極的に投稿していただき、一層の充実を図っていきます。
 

 さらに北海道の明るい未来に向けた情報発信のための学会創設60周年の記念事業を検討しておりますが、今後は、関係する学術団体などとも連携して、北海道の都市地域の発展に資するために学会活動をより一層の充実を図っていきます。


 会員のみなさまのますますのご活躍をよろしくお願いいたします。

​2022年4月

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